WKC フォーラム:
健康な高齢化のためのイノベーション
~ 今、どのような研究が進められているか ~
2014年3月5日

2014年3月5日| 神戸– WHO神戸センター(WKC)は、2014年初回となる公開フォーラムを開催しました。今回は、WKCの主な研究分野から、「健康な高齢化のためのイノベーション」をテーマに取り上げました。大学や研究機関の研究者、学生、医療従事者、地方自治体関係者、産業界、報道機関、一般市民など、多方面から70名を超える参加者が集まった本フォーラムでは、日本における高齢者のためのイノベーションに関する3つの主要な分野から最新の研究報告が行われました。昨年12月に神戸で行われた「グローバルフォーラム:高齢者のためのイノベーション」を受けての開催となったこの度の公開フォーラムでは、薬学、ロボット工学・e-ヘルス、転倒予防などに関するイノベーションについて、掘り下げた議論の機会を提供しました。

横浜薬科大学の定本清美先生は、薬剤や健康状態の管理にあたり、高齢者本人や主治医、介護者に役立つイノベーションについて、現在導入されているいくつかの実例について発表しました。機能障害や認知障害のある高齢患者の多くは、間違った薬剤の服用、薬剤量の誤認、また、服用すべき時間を誤るなどといった服薬リスクを抱えています。ゲルを用いて複数の薬剤をまとめて服用する方法は、水での服薬にくらべ格段に容易で、とりわけ、嚥下困難に悩む高齢患者にとっては非常に有効であると述べました。さらに、手先を上手く使えない、視力が衰えてきたといった患者のためには、薬剤を取り出しやすい包装の考案といった新たなイノベーションについても紹介。もうひとつの実例として報告されたイノベーションは、薬剤包装に工夫を施し、カードタイプとパッケージタイプ、2種類の包装様式に内蔵された電子機器により、薬剤が取り出された日時や服薬時の健康状態などのデータ記録が可能になるというもので、担当医による患者の服薬状況の管理などに役立っています。

神戸大学の羅志偉先生からは、高齢者の健康と自立のために研究チームで開発したロボット工学を用いたイノベーションの先端事例が報告されました。長生きする人口が増えるにつれ、高齢化は広範な意味において社会を変容させ始めました。そのひとつには、年を追うごとに、高齢化をサポートするための人的かつ財政的な資源が相対的に減少の途にあることがあげられます。こういった問題点を軽減するために、ロボット工学技術が有益でることが示されました。羅先生の研究チームが開発した介護支援用ロボットは、患者についての情報や、障害者や高齢者の起き上がる、動くといった動作を介助するために必要とされるケアやその強度を感知識別し処理することができます。また、機能訓練にふさわしい機器も開発しました。ロボット工学の領域に含まれるロボットシステムにおいては、患者の健康状態や運動性についての情報、転倒の予防、その他の健康現象についてのフィードバック機能をもったセンサーや、脳機能を検査したり刺激することができる仮想現実環境についても紹介されました。

国立長寿医療研究センター運動機能賦活研究室長の朴眩泰先生は、健康増進と転倒予防について現在系統的に取り組んでいる研究について発表しました。転倒は、高齢者のけがの主な原因で、入院治療、障害につながることや死に至る場合もあります。そのため、転倒予防は高齢者の健康と自立のために非常に重要で、朴先生の研究チームでは、転倒リスクの高い高齢者に対し、イノベーティブな予防方法について検証試験を行っています。前述のロボット工学による身体機能評価などのツールを用いた高齢者の転倒リスク検査に加え、転倒は体力の低下に起因する場合だけではないとの認識から、iPadの認知機能診断を使った検査も行っています。地域社会で転倒リスクの高い高齢者を特定し、対象者に身体トレーニングや認知機能の改善教育、また、身体・認知機能の双方を組み合わせた運動などを導入して、転倒の回避や予防のためのさまざまな方法の効果を検証しています。

講演者の発表に引き続き行われた討議では、医薬基盤研究所研究振興部長の武井貞治先生がモデレーターを務め、会場の参加者からの質問を受けながら活発な議論が繰り広げられました。討議には、主に次の4点が盛り込まれました。研究調査設計の向上、セクターを超えたイノベーターのコラボレーションの拡張、健康のための科学技術の利用、また、WHOがいかにイノベーションと高齢化をサポートできうるかといった課題です。なかでも、コラボレーション(協働)が討議の核となり、フォーラム終了後もしばしパネリストによる議論が続けられました。知識の共有に始まったディスカッションは、課題の解決やパートナーシップといった論点へと移行し、結論として、こういった議論がセクターを超えて継続されることが肝要との見解で一致しました。

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